SaaS企業への転職を考えている方の中には、「ARRってよく聞くけど、意味がわからない…」という方も多いのではないでしょうか。
ARR(年間経常収益)は、SaaS業界で最重要ともいえるビジネス指標の1つです。
本記事では以下の内容をわかりやすく解説します。
- ARRの基本的な意味と計算方法
- MRRや売上との違い
- なぜ転職にもARRの理解が必要なのか?
- ARRが高い日本のSaaS企業例
ARRとは?SaaS業界で使われる意味をやさしく解説
ARR(Annual Recurring Revenue)は、SaaS企業が1年間に得られる見込みの継続収益を示す指標です。
「売上高」や「利益」とは違い、サブスクリプションモデルのビジネス特性に合わせた専用の指標として使われています。
ARRの特徴
- 「一度きりの売上」ではなく、「継続的な契約」から得られる年間収益を表す
- 解約率(チャーンレート)にも影響される
- 投資家や経営者が企業価値を測るうえで重視する
SaaS企業にとってARRは、将来的な安定性や成長性の指標として機能しており、「ARR=その企業の実力」とも言えるのです。
ARRの計算方法を具体例で解説【図解あり】
ARRの基本的な計算式は以下のとおりです。
nginxコピーする編集するARR = MRR(月間経常収益) × 12
たとえば、あるSaaS企業が以下のようなサービスを提供しているとしましょう。
- 月額料金:50,000円
- 契約顧客数:100社
この場合のMRRは「50,000円 × 100社 = 5,000,000円」。
よってARRは以下のように計算できます。
コピーする編集する5,000,000円 × 12ヶ月 = 60,000,000円(年間経常収益)
注意点
- 年払い契約の場合は、受領額ではなく、月次換算して算出
- 解約(チャーン)があればARRも減少
ARRは「年間でどれだけの売上が見込めるか」を示すだけでなく、契約の安定性や解約率の影響も受ける指標です。
MRRや売上との違いとは?ARRとの比較早見表
ARRと似たような指標に**MRR(月間経常収益)やRevenue(売上高)**があります。それぞれの違いを以下の表で整理します。
指標 | 意味 | 主な用途 | 単位 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
ARR | 年間経常収益 | 長期的な経営判断・企業評価 | 年単位 | 投資家向けに多用される |
MRR | 月間経常収益 | 成長モニタリング | 月単位 | 短期のKPIとして重要 |
売上高 | 全収益 | 会計上の報告 | 会計期間ごと | 一括払いなども含む |
まとめ:ARRは「サブスク収益の年額換算」であり、SaaS企業における将来予測に重宝される指標です。
✅ ARRを使った売上予測:チャーンレートを加味するとどうなる?
ARRは「今後も継続される見込みの収益」ですが、SaaSビジネスでは**「解約(チャーン)」が常に起こる**ため、現状のARRそのままでは将来の売上を正確に予測できないこともあります。
そこで活用されるのが「チャーンレート(解約率)」です。
🔢 【実例】カオナビのARRを使った将来売上シミュレーション
実際の日本SaaS企業であるカオナビのIR資料を参考にしてみましょう。
- 現時点のARR(2023年3月期時点):56.2億円
参考:https://corp.kaonavi.jp/ir/library/ - 年間チャーンレート(仮定):10%
- 新規獲得・アップセルによるARR増分(仮定):12億円
📈 ステップ①:解約によるARRの減少を計算
コピーする編集する56.2億円 ×(1 − 0.10)= 50.58億円(翌年残る既存ARR)
➕ ステップ②:新規受注分のARRを加算
コピーする編集する50.58億円 + 12億円 = 62.58億円(翌期ARR予測)
📊 比較パターン:チャーン率が改善した場合
同じ条件でチャーン率が5%に改善したと仮定すると、以下のように将来ARRが増加します。
項目 | 現在のARR | チャーン率 | 新規ARR | 翌期ARR予測 |
---|---|---|---|---|
シナリオ① | 56.2億円 | 10% | 12億円 | 62.58億円 |
シナリオ② | 56.2億円 | 5% | 12億円 | 65.89億円 |
このように、チャーンレートを1桁減らすだけでARRの成長インパクトは大きくなるのです。
💡 SaaS転職での活用ポイント
- 面接で「チャーン改善によるARR成長」を話せると◎
- CSや営業職で「自分がARRにどう貢献できるか」を数字で語れる
- 企業分析時にも「成長率とチャーンのバランス」を見る癖が重要
このようにARRは「現時点の価値」を示すだけでなく、チャーンや新規ARRの予測と合わせて、企業の将来性を読み解く材料になります。
ARRが高い日本のSaaS企業【2024年最新版】
ARRが高いSaaS企業は、**「成長性」と「経営の安定性」**を兼ね備えた転職先としても人気です。以下は参考となる企業例です。
企業名 | 推定ARR | 参考資料 |
---|---|---|
SmartHR | 約160億円 | https://smarthr.co.jp/news/press/20240111 |
マネーフォワード | 約225億円(ビジネスドメイン) | https://corp.moneyforward.com/ir/ |
カオナビ | 約56億円 | https://corp.kaonavi.jp/ir/library/ |
Sansan(クラウド名刺管理事業) | 約191億円 | https://ir.sansan.com/ |
※推定値は各社のIR資料をもとに2024年度決算を参考。
まとめ|ARRの理解はSaaS転職の第一歩
SaaS業界を志すなら、ARRの意味・役割・活用方法を理解することは必須です。
「ARRって何?」の状態では、面接や企業選定で不利になる可能性もあります。
この記事を読んで、
- ARRの意味がわかった
- SaaS転職の視点からARRを活かせると思えた
という方は、ぜひ他の指標(LTV、チャーンレート、CACなど)も学んでみてください。
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