freee「情シスのSaaS利用実態調査2025」を徹底解説

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60秒でわかる調査のキモ

2025年版レポートでは、国内1,019社の情報システム担当者を対象に 「SaaS利用が2年前比で95%増」「57%の企業がSaaS管理ツールを導入し、その91%が効果を実感」 というインパクトの大きい数字が並びました。さらに経営層の61%がセキュリティリスクを最重要課題と回答しており、情シス部門の役割が「守り」と「攻め」の両面で拡大している実態が浮き彫りになっています。
出典:フリー株式会社プレスリリース
https://corp.freee.co.jp/news/20250709bundle_reserch.html


目次

1. 調査概要と注目データ

今回のレポートは、Bundle by freee が 2025年5月30日〜6月5日にかけてウェブアンケートを実施したものです。回答企業の業種・規模は幅広く、従業員100名未満から1,000名超までを網羅しています。注目したいのは次の三点です。

  1. SaaS利用率が95%増
    大企業だけでなく、中小企業でもコラボレーション系や会計系SaaSの導入が一気に浸透しました。
  2. SaaS管理ツール導入率が57%へ上昇
    SaaSを20サービス以上使う企業に限ると70%に達し、「管理の専用ツールが当たり前」の時代が到来しています。
  3. 導入企業の91%が“効果あり”と回答
    工数削減・コスト最適化・シャドーIT検知が代表的なメリットとして挙がりました。

こうした数値は、SaaSを“点”で導入する段階から“面”で最適化するフェーズに市場が移行したことを示しています。


2. 利用率95%増を後押しした二つの潮流

2.1 DXの再加速とハイブリッドワーク定着

コロナ禍を契機に一気に広がったリモートワークは、その後もハイブリッドワークとして定着しました。オフィス外でも扱いやすいSaaSの採用が進み、部門単位での“クイック導入”が常態化した結果、組織全体のSaaS利用数が急増しています。

2.2 情シス負荷の構造的増大

freeeの調査では、情シス担当者が費やす時間の約19%がSaaS管理関連業務でした。ヘルプデスク対応や端末キッティングに加え、アカウント発行・権限付与・退職者ID削除といった管理タスクが積み上がり、現場は“細切れ工数”の連続に。シャドーITを警戒するあまり申請フローが複雑化し、結果として利用部門からの反発を招く――という負のスパイラルに陥る例も散見されます。


3. 情シスが直面する七つの課題

レポートでは、ライセンス・契約ガバナンスや退職者アカウントの削除漏れといった“管理系”の課題が多数指摘されています。なかでも深刻なのはコストの最適化です。重複契約や未使用IDが放置され、サブスクリプション費用がじわじわと膨らむケースが後を絶ちません。さらに、セキュリティ監査対応や変更履歴の証跡出力など、コンプライアンス要件も年々ハードルが上がっています。こうした課題をワンストップで解決する手段として、SaaS管理ツールが脚光を浴びているわけです。


4. SaaS管理ツール導入の現状とROI

全回答企業の57%がすでに管理ツールを導入しており、特にSaaSを20本以上使う企業では7割が導入済みです。導入企業は「未使用IDの洗い出しにより、平均15〜30%のライセンスコストを削減」「退職者ID削除の自動化で年間数百時間の工数を圧縮」といった定量的メリットを報告。月額課金のツールでも、多くが“半年以内に投資回収”という試算です。
詳細レポートPDF:
https://go.freee.co.jp/rs/548-BFM-800/images/2025_Saas利用実態調査レポート.pdf


5. 2023→2025で数字はこう変わった(出典URL付き)

年版SaaS利用「増加」回答SaaS管理ツール導入率経営層セキュリティ意識出典
202378%48%55%freee「情シスのSaaS利用実態調査レポート2023年版」(※2024年版PDF p.6 前年比較 欄より引用)
https://go.freee.co.jp/MM-_DLLP.html
202480%54%58%freee プレスリリース(2024-07-17)
https://corp.freee.co.jp/news/0717bundle_by_freee.html
202595%57%61%freee プレスリリース(2025-07-10)
https://corp.freee.co.jp/news/20250709bundle_reserch.html
レポートPDF
https://go.freee.co.jp/rs/548-BFM-800/images/2025_Saas利用実態調査レポート.pdf

補足
・2023年版レポート単体の公開ページは現存しないため、2024年版PDFに掲載されている「前年結果」を参照しています。
・2024・2025年版はプレスリリースとPDFが公式サイトに残っており、一次情報を直接確認できます。

テーブルが示すとおり、利用拡大とともに管理・セキュリティ領域への投資が確実に伸びています。特に2025年版では、経営層のセキュリティ意識が60%を超え、情シス主導のポリシー整備が急務となりました。


6. 主要SaaS管理ツールをざっくり比較

製品名強みユーザーシェア*
Bundle by freee入退社ワークフロー自動化/ファイル棚卸し10.4%
マネーフォワード Admina未使用ID自動検出・コスト可視化20.7%
デクセコ契約更新アラートと利用状況ダッシュボード11.6%
ジョーシスPCキッティング連携+SSO機能11.3%
ITboardIT資産台帳とID管理の一体運用7.8%
*BOXIL SaaS管理ツールシェア2025(https://boxil.jp/mag/a8044/)

各社の切り口は異なりますが、「ID棚卸し」「契約更新アラート」「ワークフロー自動化」が三種の神器。導入前にPoCで自社運用フローを再現できるかどうかが選定の決め手になります。


営業マン視点で “この記事” を武器にする5つの使い方

活用ポイント具体的なアクション面接・提案での一言例
① 市場規模と伸び率を “数字” で語る– 冒頭データ(SaaS利用 2年比95%増、管理ツール導入率57%)を暗記しておく
– 競合調査で同等の数字が出ていないことを確認し、“一次情報”として強調
95%増という成長余地がある市場なので、営業としては“顧客開拓の余白”が大きいと判断しました」
② “情シスの7大課題” をヒアリング項目に落とす– 訪問前に「ライセンス棚卸し」「退職者ID削除」「監査証跡」などを質問リスト化
– 商談では課題→影響度→理想像の順で深掘り
「御社では退職者アカウント削除にどれくらい時間がかかっていますか?」
③ ROI 話法をストーリーごとパクる– 記事の回収シミュレーション(半年回収)をテンプレ化
– 自社製品の価格帯で“何ID削減で何ヶ月回収”に変換
「月額ライセンス*未使用ID15%*で計算すると8.4か月で投資回収できます」
④ 面接で “競合比較の視点” を示す– 主要5製品比較表を拡大印刷 or Notionにまとめて持参
– 自社・競合の差別化ポイントを3行で言語化
「Bundleは入退社ワークフロー自動化、Adminaはコスト可視化特化と整理しています」
⑤ 自己PRに “SaaS営業ならではの指標感覚” を織り込む– 記事中のARR/NRR/退職者ID削減率などを、自分の売上実績に置き換えて練習
– 履歴書にも定量表現を追加
「私の担当領域では**ARR 1.4億円/NRR 112%**を3Q連続で達成しました」

さらに差をつけるチェックリスト

  1. 決裁プロセスの想定図を書く
    情シス(痛みの当事者)と経営層(ROIの決裁者)の2軸で、想定ステークホルダーを整理。
  2. シャドーITの実害エピソードをストック
    「退職者ID放置で内部不正が起きた」「未使用ライセンスで年間◯円損失」など事例を3つ用意。
  3. 無料トライアル型の提案シナリオを練る
    PoCで“未使用IDを何件検出→◯円削減見込み”をデモすれば、短期クロージングが可能。
  4. サブスクKPIの語彙を準備
    “オンボーディング完了率”“チャーン抑止コスト”など、営業→CS連携を意識した言葉選びが好印象。
  5. 自分の過去実績を “ID管理” に置き換えてみる
    例:Excel自動化で「報告書作成3.5h→2h」⇒「アカウント棚卸し◯h→◯h短縮」と発想を転換し、親和性を示す。

まとめ

この記事に載っている 市場データ/課題リスト/ROI事例 は、営業にとって「確度の高い仮説」と「即使える数字」がセットになった便利な素材集です。

  • 商談前のアジェンダ設計
  • 面接での差別化トーク
  • 自己PRの定量裏付け

――この3場面で引き出しやすい形にメモ化しておけば、“SaaS営業らしい視座” を示せます。まずは 数字を覚え、課題を質問リスト化し、自分の実績をKPIに変換するところから始めてみてください。

詳しくは関連記事「SaaS営業のキャリアパスとは?年収アップを狙うには」で解説しています。
https://saas-career-tohshindai.com/saas-sales-career-path


8. まとめと2026年に向けた展望

2025年下期は、生成AIを標準搭載したAIネイティブSaaSが続々登場する見込みです。SaaS導入数がさらに増える一方で、政府クラウド指針の改訂などセキュリティ要件は厳格化。情シスは「導入促進」と「リスクコントロール」を両立させる体制づくりが不可欠になります。来年の調査では、生成AI利用ポリシー遵守率など新たな指標が加わる可能性も高く、今から管理フレームワークをアップデートしておくことが望ましいでしょう。

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